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2024.08.29

国際保健規則(IHR)(2005年)改正内容(仮訳)

WHO(世界保健機関)は、令和6年6月1日、WHO総会において、国際保健規則の改正を合意したと発表しました。
 
第77回世界保健総会 2024年6月1日
https://www.who.int/news/item/01-06-2024-seventy-seventh-world-health-assembly—daily-update–1-june-2024
 
International Health Regulations (2005) 2024年6月1日付 原文
https://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/WHA77/A77_ACONF14-en.pdf
 
国際保健規則改正案に対しては、加盟国は10ヶ月以内に拒絶・留保の意思表示をすることができ、12ヶ月後に効力が発生します(規則59条)。
 
本サイトでは、改正内容について、党内で作成した仮訳を紹介します。
https://www.sanseito.jp/pdf/IHR_Final_240808.pdf
 
<主な改正事項>

• 国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に加え、「パンデミック緊急事態」(pandemic emergency)の創設(12条、1条)

• WHOがワクチン配分生産調整メカニズムを主導(13条8項)

• 締約国の協力支援義務(13条9項)、WHO支援、能力開発、資金協力義務(44条2項の2、付録1の4項)

• IHRの実施に向けた締約国委員会の創設(54条の2)

 
<所感(令和6年8月時点)>

1. 「パンデミック緊急事態」の創設
従来の「PHEIC」(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)に加え、それより上の段階の「パンデミック緊急事態」が創設されました(定義あり)。

 

2. WHOによるワクチン配布メカニズム
WHOは、各国のワクチンの割当・配分について調整し、各国にワクチン生産を促し、こうしたワクチン配布メカニズムを作ることができます(13条8項)。

 

3. WHOに対する支援・協力・援助等
締約国は、「各国の法令と資源に応じて」「可能な限り」WHOの要請や活動を支援・協力・援助しなければならない(shall undertake to)と定められています(13条9項、44条1項、付録1)。従来より、WHOの権限がより強化されていると理解できます。

 

4. 締約国の措置に対するWHOの再検討要請
締約国が独自の追加的な措置をとることも可能ですが、WHOは再検討の「要請」ができる上、締約国は、3か月に追加措置を「見直す」義務を負い、影響を受ける締約国は、直接または事務局長を通じて協議を「要請」できます(43条)。

 

5. 締約国委員会の創設
締約国全部が加盟する、締約国委員会が新設されます。これは、特に44条に基づく協力・技術構築・経済支援等を効果的に実施するための、協議・調整の場と考えられ、技術的助言の小委員会も設けられています(54条の2)、

 

6. その他
締約国の能力構築には「誤報および偽情報の対処を含むリスクコミュニケーション」も含まれます(付録1)
また、ワクチン接種のデジタル証明の規定も整備される一方、アナログの接種証明には医師の署名が必要となります(付録6)。

 
 各国は「法令や資源に応じて、可能な限り」支援・協力・援助する義務が明記されるほか、WHOがワクチン配分・生産の仕組みが作られ、保健措置(接種体制やロックダウン等)についてWHOの影響が強まるとみられます。

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