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2024.11.28

「働き方改革」の成果と日本式経営の再評価に関する質問主意書

令和6年11月28日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『「働き方改革」の成果と日本式経営の再評価に関する質問主意書』

提出者 神谷宗幣

 
 一九四七年の労働基準法の制定以後、一九八七年の大改正、二〇一〇年代からの「働き方改革」を経て、日本の労働環境は変化を続けてきた。政府は「働き方改革」により、多様で柔軟な働き方を選べる社会を目指し、少子高齢化に伴う労働力不足や労働者のニーズの多様化に対応することとしている。しかし、こうした施策が真に日本の社会課題解決に貢献しているかは疑問が残る。
 
 まず、長時間労働の是正が進められる一方で、法定労働時間の短縮がサービス残業の増加や業務負担の増大につながり、精神的な負担の増加やパワハラといった新たな問題が発生している。また、正社員と非正規社員の待遇格差も依然大きく、非正規社員の賃金は正社員の約七割にとどまり、ヨーロッパ諸国と比較しても依然格差がある。こうした現状では、将来に希望を持って働ける社会の実現には課題が残る。
 
 「働き方改革」では日本の伝統的な労働慣行の見直しが必要とされ、欧米式経営を導入することの必要性が指摘されている。しかし、日本式経営の根幹である長期雇用や年功序列は、企業と労働者が長期的な信頼関係を築く土台であり、「和」の精神に基づく調和的な労働環境は、経済と社会の安定に寄与してきた。この長所を無視し、単に欧米式経営を導入することは適切ではない。
 
 近年、海外でも日本式経営の価値が再評価されている。日本独自の強みをいかした労働環境と、安定した職場づくりこそ「働き方改革」に求められるのではないか。先進国では日本のみが三十年間、経済成長率が低迷し、賃金が停滞している現状も深刻である。名目賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金が下落している現状は早急に改善されるべきである。
 
 現在、働き方改革関連法(以下「法」という。)の施行から五年を迎え、厚生労働省が法改正に向けた検討を進めているが、日本経済の成長、労働環境の改善、日本式経営の再評価を含めた総合的な見直しが必要と考える。
 
 以上を前提に、以下質問する。
 

 政府はこれまでの「働き方改革」の成果をどのような基準で評価しているか。また、当初の目的を達成するため、優先的に改善が必要と考える点は何か示されたい。
 

 法定労働時間の短縮が、意欲的に働きたい人の就労意欲を抑制する可能性について、政府はどのように評価しているか。今後、働きたい人が最大限の意欲を持って働けるような柔軟で多様な就労環境をどのように整備する方針か示されたい。
 

 非正規社員の待遇改善について、正社員への移行促進や待遇格差の縮小に向けて、更に具体的な施策が必要と考えるが、政府は今後、どのような新たな取組を検討しているか示されたい。
 

 外国人労働者の受入れが低賃金労働の拡大を助長し、賃金の低迷を引き起こすリスクが指摘されているが、政府はこの点をどのように評価しているか。労働市場全体で賃金が抑制されることを防ぎ、健全な賃金上昇を実現するために、今後どのような対策が必要と考えるか示されたい。
 

 法定労働時間の短縮がかえって精神的な負担の増加やパワハラ問題を引き起こしている現状について、政府はこれをどのように捉え、どのような対策を講じているか。また、今後どのような対策を講じる方針か示されたい。
 

 労働環境整備と経済成長の両立は重要な課題と考えるが、法施行五年後の見直しにおいて、この観点をどのように反映していく方針か、政府の見解を示されたい。また、労働環境整備と経済成長のバランスを取るための具体的な施策の方向性を示されたい。
 

 日本式経営の良さをいかすべきとの意見について、政府はどのように評価しているか。特に、長期的な企業成長や従業員の安定に寄与する日本式経営の強みが、現在の政策によって損なわれる懸念はないか政府の見解を示されたい。
 

 法施行五年後の見直しにおいて、日本式経営の視点がどのように考慮されているか。さらに、日本独自の経営の強みをいかすための具体的な施策を検討する考えはあるか示されたい。
 

 「職務給」によって職務内容を限定する動きが見られるが、職務を柔軟に捉え、同じ人員で多様な業務に対応できる体制を採ることで、労働人口減少への対応が可能になると考える。こうした柔軟な職務設計について、政府はどのように捉え、どのような対応方針を検討しているか示されたい。
 

 法施行五年後の見直しに当たり、国民の意見をどのように反映させていくのか。労働組合の組織率が低い現状で、労使団体だけが関与する形式では労働者の意見が十分に反映されない可能性があるが、政府はこの点についてどのような工夫や対策を検討しているか示されたい。
 
  右質問する。

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