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映画「めぐみへの誓い」世界初上映、現地レポート

2021/06/24 池田みえこ

 

6月4~6日に韓国ソウルのミョンボ・アートシネマにおいて「第1回ソウル・ラックスパー人権映画祭」が行われた。韓国ではラックスパー(千鳥草)の花言葉が「自由・正義・人権」を示し、北朝鮮脱北者支援団体「忘れな草」が主体となって開催された。その開幕作に北朝鮮拉致問題を扱った映画「めぐみへの誓い」が選ばれ、本作品の世界初上映となった、

 

「映画『めぐみの誓い』は13歳の時、北朝鮮要員に拉致されためぐみさんを中心に、拉致被害者とその家族の闘争の人間ドラマだ。映画では『横田めぐみさんと拉致被害者田口八重子さんは、今どこにいるのか。もしかすると彼らはまだ、北朝鮮にいるのではないか。』という疑問を、視聴者に投げかけている。」、また「拉致被害者の象徴である横田めぐみさんの拉致過程と北朝鮮での生活や、彼女を救うための家族の感動的な闘争を、ありのままに描いたと評価を受けているインターナショナルプレミア映画である。」と、月刊朝鮮6月号で紹介していた。

 

https://monthly.chosun.com/client/mdaily/daily_view.asp?Idx=12498&Newsnumb=20210512498

 

http://m.monthly.chosun.com/client/Mdaily/daily_view.asp?Idx=12640&Newsnumb=20210612640

 

映画「めぐみへの誓い」は、オープニングと2日目の2度にわたって上映された。

ここでは現地で、直接インタビューした数名の方々から1名の感想を述べてみる。

「『無知』であった自分にショックを受けた。めぐみさんが日本人を代表して、朝鮮半島に対する過去の歴史を清算させようとする姿にショックを受けた。拉致した犯人が慰安婦の話をした時も『日本の朝日新聞がつくったデマだ。』といっていたのに驚いた。日本人が過去の歴史で苦しんでいる。自分に何ができるのか、心が痛かった。あってはいけないことだ。

 

めぐみさんが早く日本に帰るためにハングル覚えたのに希望を失ってしまった。強い人なので生き延びようとし、北朝鮮で生きることを選択している。めぐみさんのお母さんも、めぐみさんに『生きるんだ!』と夢の中で勇気を与えていた。韓国人なら我慢できないだろう。映画を観たあと家に帰って検索すると、めぐみさんのお父さんが去年亡くなったことを知った。心が締め付けられるように痛かった。」と、涙交じりで話していた。

 

またボランティアスタッフの中には、慰安婦法廃止国民行動という団体の方も数名いた。

「『めぐみへの誓い』は韓国と日本において本当に重要な映画だ。慰安婦問題がウソ偽りであることを映画で表現していた。私たちは韓国人が嘘つきだと国際的に思われていることが悔しい。去年の秋も青瓦台(大統領府)の前に行って抗議活動した。韓国人は嘘つきではないことをしっかり証明しなければならない。コロナが終わったら、朝日新聞社の前で抗議活動するつもりだ!」

https://www.iza.ne.jp/article/20201006-44H3T4F3DZJ5VHIJMZ24OJT7PE/

 

映画「めぐみへの誓い」は朝鮮半島の歴史問題にも言及している。韓国の「慰安婦法廃止国民行動」という民間団体からも、この映画祭のボランティアスタッフとして参加者がいたのだ。韓国と日本という2カ国間だけでは解決しにくい歴史問題さえ北朝鮮という因縁の隣国を通して、より俯瞰的かつ客観的に向き合うことができる大変貴重な作品である。

 

2日目には「拉致被害者問題セミナー ~日韓両国の記憶の中の拉北者~」が映画「めぐみへの誓い」上映後に開催され、野伏翔監督や特定失踪者問題調査会の荒木和博教授がパネリストとして録画で登壇していた。

 

野伏監督は「めぐみさんが拉致されてから40数年経った。日本では署名活動と書籍と、アニメやドキュメンタリーはあっても映画はなかった。政治家は行動で結実できないので、映画を通して政治に民意を拡げていきたい。」など語られ、荒木教授は「拉致問題は家に帰りたくても帰れない人権問題であり、一人でも多くの人に伝えるべきことだ。

日韓拉致問題の相違を述べるなら韓国の場合は船ごといなくなるなど表に現れ易いが、日本は知らないうちに一人ひとりが拉致されるので表面化しづらい。拉致問題解決方法は①お金②国際社会と一緒に取り組む③中国を通して日本大使館への流れ④軍事力の4つがある。日本や韓国以外でも世界的に拉致が多いので、国際社会と一緒に扱っていくことが重要だ。」と語っておられた。

 

「特定失踪者問題調査会」HPの「特定失踪者問題とは」に以下の文言がある。

「日本政府は令和2年5月時点で12件17名の日本人拉致を拉致被害者として認定している。しかしそれが氷山の一角であり、政府がその実態を隠していることも明らかになっている。
「特定失踪者」という言葉は「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者」を意味し、当会発足とともに定められた。令和2年(2020)5月現在、調査会には約470名の失踪者リストがあり、警察には約900名の拉致の可能性のある失踪者のリストがある。またこれらのリストにない失踪者でも近くに身寄りがなかったり、家族が全く拉致と思わなかったりして申し出はされていないが実際は拉致されているというケースも決して少なくないと思われる。

事実、日本政府が認定している被害者の家族も、大部分は事件当時北朝鮮による拉致などとは夢にも思っていなかった。」

 

日本をはじめ世界の多くの人たちへ映画「めぐみへの誓い」を届けて、この夢にも思わなかった事実を共有し、拉致被害者たちの日常を一日でも早く取り戻していきたいと心から思う。

 

 

フリー画像

https://pixabay.com/ja/photos/sea-korea-%e6%97%a5%e6%9c%ac%e6%b5%b7%e3%81%ae%e6%b5%b7-5034311/

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