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2021年サッカー EUROのイングランドサポーターの暴動報道の見方

2021/07/29 松本裕子

 

オリンピックで盛り上がっている日本。その3週間前、五輪に勝るとも劣らない熱狂がロンドンでも巻き起こっていた。ロンドンに所在するサッカーの聖地ウエンブリースタジアムでのヨーロッパ選手権の決勝戦イングランド対イタリアの試合である。しかしその試合結果に比べイングランドサポーターの暴動の報道が目立った。

 

一連の報道についてロンドン生まれの熱狂的イングランドサポーターである40代男性(大学卒業後航空会社に勤務)を筆者は取材した。そして、彼はその日に起こった暴動報道の裏側にあるものも語ってくれた。

 

Q.ウエンブリースタジアムは、なぜ聖地と言われているのですか?

「1966年、FIFAワールドカップイングランド大会でイングランド対ドイツの決勝戦がウエンブリーで行われた。イングランドが4−2で優勝した。この試合は今でも語り継がれ伝説になっている。まあ現在のスタジアムは1966年当時のものではないけど。」

 

Q.イタリアとの決勝戦ではPK戦で負けましたが、結果についてイングランドサポーターはどう感じているのですか?

「実は多くのイングランドサポーターは結果を受け入れてるんだ。試合展開としては、前半の早い時間にイングランドが先制したんだけど、後半でイタリアに同点にされ、PK戦になった。PK戦では何回も痛い目にあってるからめまいを感じたよ。若い選手がPKを失敗した時は、もちろん悲しかった。一方でイングランドは1966年がピークで、そこから落ち目なんだ。最初はそれを受け入れられなかったけど、2002年の日韓ワールドカップあたりから、自分達の実力を認め始めたんだ。だから、今回の負けもほとんどのサポーターは受け入れているんだよ。」

 

Q.メデイアは受け入れていると報じていないように見えますが…

「メデイアはね、イングランドサポーターはレイシストだとレッテルを貼りたいんだよ。」

 

Q.トラブルがあったのは事実ですか?

「スタジアムの中の一部の観衆が酔っ払ってけんかをしたり、暴れたのは事実だよ。しかもチケット販売がコロナの影響でうまくいかず、多くのトラブルがあった。例えばオンラインチケットを写メする。それを見せて、ちゃっかり入場してチケットを買った本人が入場できなくなったりしたんだよね。しかし大半のイングランドサポーターは選手とボールに集中していたんだ。トラブルを起こした連中は試合に集中していないのだからイングランドサポーターではない『ちゃっかり入場組』だと僕は思っているよ。決勝戦までは、皆静かに応援してたので警備態勢も甘かったんだよな。」

 

Q.ロンドン市内でもトラブルがあったようですが。

「警察が以前のように機能しないことが、トラブルの根本的な原因だよ。例えば、バイクに乗ってる窃盗犯を警察が追いかけて逮捕しようとするだろ。もしバイクが倒れて窃盗犯が怪我でもしたら、警察がSNSやメデイアに叩かれるんだ。だから警察は億劫になり、バイクに乗った窃盗犯を逮捕できなかったりするのさ。実際にナイフによる犯罪数はうなぎ上り。パブでトラブルがあったのは事実だけどテクノロジーの変化が治安を悪化させてるのも事実だよ。」

 

Q.イングランドチームへの期待値は?

「若いチームだから、次のワールドカップが楽しみだね。監督もチームの一体感を大切にしている。ユーロよりやっぱりワールドカップへの思い入れが強いからね。優勝してほしいけど、現実は理解しているよ。」

 

Q.インタビューに答えてくださりありがとうございます。

「また、いつでも答えるからね。」

 

執筆者の気持ち: このインタビューによって、日本でのSNSやメデイアに対する関心が強まった。新しいテクノロジーで様々な意見を発信・収集できるようになったが、動画や発言の一部の切り取りなどによって、事実が歪曲された形で拡散される事例が非常に多く見られるようになった。今回のイングランドサポーターに対する報道もその一例であろう。メディアやSNSのレッテル貼り等によって、神社や古墳、今まではそこにあることが当たり前と思っていた場所が、これからどんどん侵されていく恐れがある。日本人一人一人が情報のリテラシーや取捨選択が試される社会になってきているのを自覚する必要がある、と強く思った。

 

参考資料

https://www.bbc.com/news/uk-57803366

https://en.wikipedia.org/wiki/1966_FIFA_World_Cup_Final

https://ja.wikipedia.org/wiki/2002_FIFAワールドカップ

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