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2023.11.27

【質問主意書】 洋上風力発電に関する質問主意書

 令和5年11月24日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『洋上風力発電に関する質問主意書』
 
政府は、洋上風力発電を「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札」と位置づけ、第六次エネルギー基本計画では、二〇三〇年度までに約五百七十万キロワットの導入を目指すとされている。
 「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(以下「再エネ海域利用法」という。)に基づく海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域に指定された秋田県沖では、国内初となる大規模な洋上風力発電所が整備され、すでに三十三基の大型風車が稼働している。二〇三〇年までに、さらに百基以上の設置が予定されているという。
 
 今後、東北の日本海沿岸をはじめとして、日本各地で洋上風力発電事業が展開されていく見込みであるが、沿岸部に風車群が立ち並ぶこのような計画について、漁業関係者からは、海洋生物への影響を危惧する声が上がっている。さらに地域住民からも景観への影響、騒音や低周波音による健康被害に対して懸念が示されている。
 
 Global Wind Energy Councilが発表した令和四年の風力発電設備の市場シェアは、そのほとんどを外国企業が占めている。特に、世界市場の半分以上を中国企業が占有しており、そのシェアは急速に拡大している。これに対し、平成三十一年以降、日立製作所や三菱重工などの日本企業は、非採算部門となった風車製造事業から撤退している。このような状況は、日本の重要なエネルギー・インフラが海外依存となることを意味し、これにより、国内資本の流出が起こるだけではなく、海洋資源に関連する海域情報が海外に流出するリスクも伴っている。
 
 また、洋上風力発電の事業者選定を巡っては、令和四年二月十七日の第二百八回国会衆議院予算委員会で、収賄容疑で逮捕された秋本真利衆議院議員が国会質問を通じて評価基準の見直しを主張し、これを受けて、公募入札手続の延期及び評価基準の見直しが行われた。公募が開始され、事業者側が準備を進めている中での基準変更は、恣意的に行われた可能性があり、特定の企業に有利に働きかけるような変更であったのではないかという疑念が提起されているところである。
 
以上を踏まえ、以下質問する。
 
 大型風車の設置が、レーダー電波の遮蔽や多重散乱による偽のエコーの発生、強い反射波の受信等を引き起こし、我が国の船舶の安全航行や安全保障システムに影響を及ぼす可能性がある。令和四年五月二十六日の第二百八回国会衆議院予算委員会において、萩生田経済産業大臣は「レーダーに干渉するからやめてくれと言われると、その情報を相手に与えてしまうことにもなると思いますので、ここは、今回、自民党の提言も踏まえまして、より実効性のある仕組みの構築に向けて、防衛省など関係省庁と緊密に連携しながら、政府全体での議論にしっかりと貢献してまいりたいと思います」と答弁している。その後、具体的にどのような仕組みを構築したのか、具体的に示されたい。
 
 平成三十一年以降、日立製作所や三菱重工などの日本企業は非採算部門となった風車製造事業から撤退している。日本国内において風力発電事業を推進する場合、経済安全保障や国内産業振興の観点から、日本企業に必要な助成を行うなど、国産の風力発電機の採用を積極的に推奨する等対策を講じるべきであると考える。政府として、そのような認識を持っているのか示されたい。
 
 再エネ海域利用法には、事業者側に対する被害補償が定められているが、住民の被害補償に関する法的根拠は同法に含まれていないのはなぜか。施設周辺住民の具体的な被害について、想定していないのか。住民を含む被害補償については、どのような法的担保がなされているのか、示されたい。
 
 洋上風力発電事業において、強風や落雷など自然災害を原因とする事故リスクに対する危機管理方法について明らかにされたい。また、洋上風力発電事業の終了もしくは中断に伴う発電設備の撤去につき、新たな産業廃棄物の発生を防ぎつつ適切な処分を行う方策について、事業者は明示すべきであると考えるが、政府の認識を示されたい。
 
 山形県遊佐町沖の洋上風力発電事業の想定海域は、遊佐沖想定海域で西浜海水浴場以南から酒田市境までの沖合五キロメートル、酒田沖想定海域で遊佐町境から鶴岡市境までの沖合四から五キロメートル(港湾区域、空港制限区域を除く)である。当該海域には、最大高さ二百七十メートル、ローター直径約二百四十メートルという世界最大規模の風車が数十機、建設される予定である。これらについては、洋上風力発電が先行する英国等欧州各国が認めている離岸距離である十二海里(約二十二・二キロメートル)以上と比較して極端に短い離岸距離である。こうした計画設定で、予想され得る周辺地域への健康被害や景観への影響、落雷事故による二次被害などのリスクを、欧州等で確保される離岸距離相当に回避できる根拠を示されたい。
 
 洋上風力発電のような大規模な工作物の新設に際しては、環境影響評価法に基づき当該事業の環境に対する影響を適切に評価することが定められている。同法の第二章には方法書の作成前の手続として計画段階配慮が定められており、第三条の三には計画段階環境配慮書を作成することが義務付けられている。しかしながら、前項の山形県遊佐町沖の洋上風力発電事業の計画では、具体的計画の複数案どころか単一案も提示されず、またフォトモンタージュ写真も開示されなかった。これでは十分に説明を尽くしたといえるものではなく、住民説明会、法定協議会、研究検討会議などが開催されたことを以て、「住民同意を得た」と結論づけることは不適切なのではないか。
 
 洋上風力発電の事業者決定を巡り、令和四年三月十八日、秋田県八峰町・能代市沖の入札第二ラウンドの延期及び落札審査基準の見直し等が行われたが、その変更点について、これを事実上誘導した国会質問を行った秋本真利衆院議員は、別途事業者から数千万円を受け取ったことについて収賄容疑で逮捕された。この経過を見るなら、入札第二ラウンドの延期及び落札審査基準の見直しは不適切であったのではないか。また、同年二月十七日の第二百八回国会衆議院予算委員会における秋本真利衆議院議員の国会質問を受けて、当時の萩生田経済産業大臣は、公示後に審査基準を見直すことについて消極的とも捉えられる答弁をしたにも関わらず、なぜ、第二ラウンドを延期してまで、審査基準等の見直しを図ることになったのかについて、理由を示されたい。
 
 右質問する。

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