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2023.04.28

先端電池技術の戦略的アプローチ


 

2023/4/18 山下 政治

 
2022年10月10日に「先端電池技術の憂鬱」というタイトルで先端電池産業がチャイナに牛耳られている記事を発表した。
「先端電池は我々に様々な生活環境を変えるエネルギーであると同時に今後の軍事装備は電池が動力エネルギーになり、その大半の材料や製造工場がチャイナに依存している現状をどのように打開するのか、これから考えていく必要がある。」とまとめた内容だ。本記事はその続編である。

米国エネルギー省や国防省はチャイナの電池産業における優位性に対応するため戦略的アプローチを取る必要があると判断している。限定的なサプライチェーンのデカップリングを採用しチャイナの影響力を最小限に抑え、今後は国内での採掘、加工、電池生産を強化し技術革新を進めていくことが必要だとしている。また、特に国防省の現在および将来のニーズを十分に満たす先端電池が必要であると認識している。

戦略的アプローチを取るため、米国は以下のような目標を掲げている。

「選択的デカップリング」による技術分野における北京の影響力の低減
中国の積極的な経済戦略は、重要なサプライチェーンにおける中心性を確立し、それに伴う依存関係を武器にするものである。つまり、「中国が『メイド・イン・チャイナ2025』戦略で特定したすべての分野」は、米国が「積極的かつ選択的に切り離すべき分野」ということだ。

新しい軍事能力を提供する電源を開発
分散型作戦への移行を可能にするバッテリーの革新は重要な部分を占めている。バッテリーの改良は、無人システムや電磁戦など、将来の紛争で大きな意味を持つ新しい能力を引き出す。

自動車産業における米国の経済的リーダーシップの支援
自動車産業は米国最大の製造業であり、米国のGDPの3%を占める。この産業は「米国経済における800万人分の雇用に貢献している」。世界が電気自動車に移行していく中で、中国のサプライヤーに依存したままでは、米国の自動車メーカーは遅れをとることになり、米国経済に大きな打撃を与えることになる。

以上に記した目標を達成するため、米国は以下の4つの戦略を採用し国内志向の先端電池のサプライチェーンを構築する。
第一に、米国は利用可能な政策手段を用いて、採掘、加工、電池生産、および電池のリサイクルに投資を行う。
第二に、中国のサプライヤーを追い越すために、中国が支配する重要鉱物の代替品、次世代電池技術、リチウムイオン電池の製造技術の革新を促進するための政策手段を導入する。
第三に、国防総省は、軍用電池の産業基盤を強化する国防総省独自の政策手段を活用することを視野に入れて、電池サプライチェーンの全面的な見直しを行う。
第 4 に、米国政府はサプライチェーン全体の労働力開発と人材育成プログラムに投資する。

I. 採掘、加工、電池生産、リサイクルへの投資を行い、奨励する。

21世紀の最先端産業の多くがそうであるように、電池生産や重要鉱物の採掘・加工は、極めて資本集約的である。特に電池メーカーは、「薄利多売と多額の保証債務の負担」に直面する。このような理由から、「過去12年間に大量のリチウムイオン電池セル製造事業への参入を検討した北米の主要企業は、いずれもこの機会を見送った」という。以上のように、電池とその原材料の戦略的重要性を考えると、米国の強固な電池産業を構築するためには、政府の支援が必要だ。
米国政府は、外交的・経済的手段を用いて友好国と協力し、重要な鉱物の持続的な供給源を確保する必要がある。国内の供給源をオンライン化するために、エネルギー省は、採掘・加工企業、正極・負極メーカー、電池メーカーに対して、インセンティブ、特に融資保証を提供する必要がある。このような行動は、電池関連企業への持続的な支援を意味し、民間資本を国内サプライチェーンの構築に向かわせることになる。

II. サプライチェーンの脆弱性を最小限に抑え、中国のサプライヤーを追い越すために、鉱物の代替品、次世代バッテリー技術、製造方法の革新を推進する。

生産面では、米国の電池メーカーは中国の競合他社に比べて約10年遅れている。中国に追いつき、最終的には追い越すためには、政府が電池の革新に向けて慎重に投資する必要がある。すなわち、コバルトやグラファイトなど、中国がコントロールしている原材料の代替品を見つけること、潜在的なブレークスルー技術に投資すること、そして、リチウムイオン電池の新しい効率的な製造プロセスを開発することだ。

III. 国防省のツールを使用して軍用バッテリーのサプライチェーンを強化し、新機能を現場に投入することを目標とする。

電池は、無人システムや指向性エネルギー兵器の電源、人工衛星の電源など、国防にとってさまざまな意味を持っている。そのため国防省は、既製品よりも厳しい仕様で作られている軍用バッテリーのサプライチェーンを確保するための措置を講じなければならない。国防省はそのために様々な政策手段を用意する必要がある。

IV. サプライチェーン全体の労働力開発と人材育成プログラムに投資する。

電池とその材料を設計・製造するには、長年にわたる専門的な訓練が必要である。米国では、重要な採掘と加工、正極、負極、電極の製造、電池のエンジニアリングと製造の分野で、深刻な人材不足に直面している。ホワイトハウスは、国内の人材を育成するとともに、必要に応じて海外の専門家を導入することで、この課題に対処しなければならない。

「先端電池技術の憂鬱」ではチャイナに電池の原料を抑えられている現状をレポートしたが、米国はその危機感を持ち、原料確保、新技術、軍用の特殊電池それと人材育成の分野で投資し、このままチャイナの思い通りにはさせないぞ、という意気込みを感じさせる。
10年ほど前だったか、今後はバッテリーを制するものが世界を制すると言われていた。日本のバッテリー技術は製造、性能、安全性においては最高水準だ。チャイナや韓国製のEVが路上で炎上している動画がアップされているのをみると日本のレベルとの違いを見せられる。日本は個体電池も開発済みでより安全な先端電池を持っているが、原料はチャイナからの輸入に頼っている。結局根っ子を抑えられているのである。今後日本もレアメタル等に頼らない先端電池の開発が必要になる。それには米国のように国益国防を鑑みた国からの投資が必要であろう。

参考
https://s3.amazonaws.com/media.hudson.org/Hamilton%20Commission_Powering%20Innovation.pdf

写真
トヨタの全個体電池搭載車
https://www.netdenjd.com/articles/-/255349

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