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2024.01.30

歴史認識に関わる我が国の政策に関する質問主意書

令和6年1月26日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『歴史認識に関わる我が国の政策に関する質問主意書』
 

 第二百十一回国会において、「歴史認識に関わる我が国の政策に関する質問主意書」(第二百十一回国会質問第四六号)(以下「本件質問主意書」という。)に対して、答弁書(内閣参質二一一第四六号)(以下「本件答弁書」という。)の送付があった。
 
 本件答弁書では、本件質問主意書の意味が不明であるとの趣旨を繰り返し、誠実な回答はなされていない。本件質問主意書は、政府による情報の適切な発信に関するものであり、内容が自明であって、意味が理解できないとして回答しないのは、政府の情報発信に対する姿勢に疑問を抱かせるものであった。
 政府が答弁の回避をしている間にも、国際社会では日本をターゲットにしたいわゆる「歴史戦」というべきキャンペーンが継続されている。
 
 例えば、韓国では、昨年十二月、いわゆる慰安婦問題に関連し、日本政府に損害賠償を命じる高裁判決が確定した。通常、主権国家は他国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則が適用されるが、高裁はこれを認めず、一九六五年の日韓請求権協定で解決済みである本件について、受け入れがたい判決を出している。
 
 また、本年一月、徴用工として動員されたと主張する韓国人の遺族が日本企業に損害賠償を求めた訴訟で、賠償支払いを命じた判決が確定した。旧朝鮮半島出身労働者に関する訴訟で原告側勝訴が確定するのは九件目となった。このように、事実に基づかない主張がますます国際社会に広まるリスクが高まっている。
 
 さらに、今年三月には、日本をホロコーストに関連付ける書籍(Bryan Mark Rigg Ph.D.著「Japan’s Holocaust: History of Imperial Japan’s Mass Murder and Rape During World War II」。以下「本件書籍」という。)が出版される予定である。本件書籍の紹介文によると、一九二七年から一九四五年の間に天皇の命令により少なくとも三千万人が虐殺されたという主張が含まれているようである。しかし、これは歴史的な事実として何ら裏付けがない。
 
 例えば、東京大空襲の犠牲者数は十万人超、広島原爆による死者数は約十四万人で統計的な裏付けがある。ナチスによるユダヤ人の虐殺の犠牲者数は諸説あるものの、多いもので約六百万人とされている。
 
 一方で、中国がしばしば引用する「南京虐殺の三十万人」等をはじめ、「アジアで日本の侵略により三千万人が犠牲になった」とする主張については、これを支持する統計的な資料は見当たらないことが指摘されている。
 
 このように日本の歴史が事実に基づかない主張により歪められ、国際社会で誤解を招く状況が生じている現状に対し、我が国は真剣に対応する必要がある。誤った情報が広まる度に受け身で対応するだけでは不十分である。我が国として、能動的に正しい歴史認識が国際社会で理解されるような取組を進めることが極めて重要である。
 
 かつて村山富市政権時代、いわゆる「村山談話」を発表し、日中、日韓がそれぞれ歴史研究に取り組むことが合意された。この取組の一環として、日本は国内に残された歴史資料の整理収集とデジタルアーカイブ化に取り組み、アジア歴史資料センターとして公開している。一方、中国と韓国は、戦時中の資料のアーカイブ化や公開に関しては、まだ進展が見られていない。また、客観的な歴史的資料に基づかない主張や、根拠の乏しい国内裁判の判決が繰り返されている現状がある。
 
 こうした現状である以上、日本は国を挙げて事実に基づく歴史を国際社会に広める努力がいっそう求められる。産業遺産情報センターや領土・主権展示館などの活動は、この目的において有益であり、さらなる強化が望まれるとともに単なる資料公開にとどまらず、研究の推進と判明した研究成果の積極的な発信が求められる。
 
 また、現代では、目的性が意識された認知戦や情報戦が盛んに行われていることは周知の事実である。科学技術の発達に伴い、AIを使用したフェイク情報の拡散も行われている。
 
 国の歴史を歪め、国内外に分断を持ち込むフェイクの持ち込みに対して、事実をしっかり対峙させる持続的な対応が求められる。この点では、国内外の誤解を招く情報に対する迅速かつ的確な反応及び真実を伝えるための戦略的な情報発信が、国際社会での我が国の立場を強固にする上で不可欠であるといえる。
 
 以上を前提に、以下質問する。
 
一 本件答弁書において、我が国が関係する歴史の認識についての具体的な範囲とその誤った事実認識が国際社会に及ぼす影響に関する質問の意図が不明確であったとの指摘を受けたことから、以下の点について、より明確にし、再質問する。
 

1 政府は、我が国が関係する歴史の認識のうち、慰安婦問題、旧朝鮮半島出身労働者問題、南京事件などの歴史的事例について、どのような立場をとっているか。これらの事例に関して、現在の政府の公式見解を示されたい。

 

2 政府は、国際社会におけるこれらの歴史的事例の認識が日本のイメージにどのような影響を及ぼしていると考えているか。特に、誤解や誤った情報が日本の国際的な評価にどのような影響を与える可能性があるかについて、政府の見解を示されたい。

 

3 政府は、歴史的事実に基づかない主張や情報が我が国の国際的イメージに与える影響に対して、どのような対策を講じているか。特に、歴史的事実と異なる内容を含む公表資料や著作に対して取り組んでいる具体的な施策と、それらが我が国の国際的イメージの改善にどのように寄与しているかについて示されたい。また、事実に基づく歴史認識を積極的に国際社会に発信し、その理解を深めるための取組や今後の展望についても具体的に示されたい。

 
 外務省のホームページに記載されている、日本軍の南京入城後の非戦闘員の殺害や略奪行為についての政府の立場は、どのような資料に基づいているか。二〇二三年四月三日の参議院決算委員会で林外務大臣が言及した戦史叢書「支那事変陸軍作戦」を含む、この見解を支持する具体的な資料や証拠は何か。
 また、戦史叢書「支那事変陸軍作戦」に日本軍が一般住民を意図的に殺害したという明確な記述がないとされていることから、外務省ホームページの現在の記載内容には根拠となる資料が欠けており、誤解を与えている可能性があると考える。この点について、政府は外務省ホームページの記載内容に対してどのような評価をしているのか。
 
 右質問する。

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