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2024.02.23

消防行政の現状について|かわた あつし

栃木県宇都宮市議会議員の河田敦史と申します。
私は2022年3月まで東京消防庁に約5年間勤務をしており、火災、救急、救助活動など多くの現場に出動しておりました。
 
消防行政の現状について|かわた あつし
私の消防職での経験をもとに近年、出動件数が激増している救急出動件数の推移などをもとに消防行政の現状を取り上げていきたいと思います。
 
最近、救急車の出動が多いように感じませんか?
 
総務省消防庁が出している「令和5年版 救急救助の現状」によると令和4年の救急自動車出動件数は7,229,572件と過去最多を記録しています。
栃木県宇都宮市でも平成27年が19,930件、令和4年が24,684件、令和5年が27,151件と近年、救急出動件数は激増し、過去最多を記録しています。
 
消防行政の現状について|かわた あつし※宇都宮市の救急出動件数の推移
 

救急出動件数が増えることでみなさまの生活にどのような影響があるのかご存じでしょうか?
 
私は東京消防庁で勤務していた経験から次の点を危惧しております。
 

① 救急車の到着、病院への到着が遅くなることで助けられる命が助けられなくなる
(現場到着所要時間 平成19年7分    令和4年10.3分)
(病院収容所要時間 平成19年33.4分 令和4年47.2分)
※総務省消防庁 令和5年版 救急救助の現況

② 消防職員の疲弊により、消防行政の質の低下

③ 消防行政に係る費用の増大による財政逼迫

 
① について説明していきます。
救急車の到着や初動措置が遅くなれば当然、救命率も下がっていきます。
「総務省消防庁 令和5年版 救急救助の現況」(108ページ)では一般市民が目撃した心原性心肺機能停止傷病者(10か年集計)のうち、救急隊が心肺蘇生を開始した時間別の生存率が掲載されております。
救急隊到着が5~10分だと1か月後生存率が14.1%
10~15分         10.3%、
15分以上           5.1%
と時間が経過するごとに生存率が低下していることが分かります。
今後、今のまま対策が取られないと救急隊の到着が遅くなることが見込まれ、このデータからも読み取れるように助けられる命も助けられないといったことも十分にあり得ます。
 
② について
私自身は救急隊ではありませんでしたが、目の前で救急隊の激務を目の当たりにしてきました。
東京消防庁での一般的な救急隊の勤務は8時30分~翌8時40分までとなっており、夜間は仮眠の時間がとられております。しかし、現状では救急隊の出動件数の増加で救急隊の仮眠の時間はほとんどありません。
8時30分に出動をして正規の勤務時間には1度も消防署に帰署せず、翌日の10時すぎまで出動をしていたということもありました。休憩時間も取れずに出動をしていたことで身体的、精神的不調を訴える職員や救急車による事故も発生しています。救急隊も含めた消防職員の処遇改善、人員増強は喫緊の課題だといえます。
 
③ について
日本は世界的に見ても珍しく救急車を要請したときの費用は無料です。この費用は税金で賄われております。
少し古いデータになりますが平成16年7月に東京都の財務局が出している「機能するバランスシート 救急事業とバランスシート」によると救急隊の1出動あたりのコストが約45,000円かかっていると試算されております。
これを国全体の出動件数で計算すると
7,229,572件×45,000円=約3,253億円
と試算されます
宇都宮市でも
平成27年19,930件×45,000円=8億9,685万円
令和5年 27,151件×45,000円=約12億2,179万円
と8年間で約3億3,000万円増加しております。
救急出動需要の増加により、自治体の財政はより厳しいものとなっております。
 
原因究明をすることが最優先だと考えておりますが、それに時間を要するのであれば救急車の有料化、消防職員の増強、消防職員の処遇改善などの対策をとらなければ消防行政はパンクしてしまいます。
こうした現状を危惧した自治体では救急車での搬送に条件付きですが費用負担を求めるということに踏み切っております。
三重県松阪市では救急車の出動件数が過去最多を記録しており、このままの救急運用だと限界を迎え、助かる命も助からなくなるということで救急搬送されながら入院に至らなかった場合、患者1人につき7,700円を徴収すると発表しております。
 
救急需要のひっ迫により、このような対策を取っていく自治体は増えていくと思います。
 
あなたの大切にしている方にもしものことがあったときに救急車の到着が遅くなり、助かったはずの命が助からなくなるといったこともありうるかもしれません。
 
そのようなことにならないためにも市民の生命を最前線で守る消防行政の現状改善のために今後も議会で訴え続けます。
 
〇参考文献
機能するバランスシート 救急事業とバランスシートの役割 東京都財務局
令和5年版 救急救助の現況 総務省消防庁
宇都宮市消防局 令和5年版 消防年報
NHK 入院に至らない救急搬送 6月から7,700円徴収へ 三重松阪
 

かわた あつし
Kawata Atsushi消防行政の現状について|かわた あつし
所属議会
宇都宮市議会議員(栃木県)
経歴
文京学院大学人間学部 卒業 東京消防庁 退職
 
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