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2024.03.21

地方行政への国の介入強化に関する質問主意書

 令和6年3月18日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『地方行政への国の介入強化に関する質問主意書』
 
憲法は、第八章で地方自治の章を設け、「地方公共団体の運営は原則として住民自身の責任においてみずからの手で行うという住民自治の原則と、それから、国から独立した地方公共団体の存在を認め、これに地方の行政を自主的に処理させるという団体自治の原則をともに実現するという地方自治の原則」を地方自治の本旨(憲法第九十二条)として定めている(第百五十四回国会衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会。内閣法制局長官発言)。
 
そして、平成十二年に施行された地方分権一括法は、国と地方公共団体の関係を「対等・協力関係」と位置付けた。そして、地方自治法は、地方公共団体の自主性と自立性を強調し、地方行政への国の関与について、厳格な条件を設けている。
 
概観するなら、地方公共団体が国の関与を受ける場合、その根拠は個別法に基づかなければならない(地方自治法第二百四十五条の二)。そして、国の関与は、「その目的を達成するために必要な最小限度のもの」とし、「普通地方公共団体の自主性及び自立性に配慮しなければならない」(地方自治法第二百四十五条の三第一項)。さらに、個別法で自治事務に対する指示権等を認めることとする場合の要件は、「国民の生命、身体又は財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等特に必要と認められる場合」に限られている(地方自治法第二百四十五条の三第六項)。
 
しかし、令和六年三月一日に閣議決定され、同日国会に提出された地方自治法改正案では、この枠組みに特例を設け、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」において、国による地方行政への介入強化につながる以下の措置が可能とされている。
 

① 大臣や都道府県知事等が地方公共団体に対し、資料又は意見提出の要求をすること。

② 大臣が都道府県に対し、事務処理調整の指示をすること。

③ 大臣が地方公共団体に対し、生命等の保護の措置に関する指示をすること。

④ 大臣が都道府県知事等に対し、応援の指示をすること。

  
このような改正は、「対等・協力関係」に位置付けた国と地方公共団体の関係を変容させるものであり、独立した自治事務に対して国の不当な介入を誘発しかねないものである。
 
このような内容に関し、当初、全国知事会からは、憲法で保障された地方自治の本旨や地方分権改革により実現した国と地方の対等な関係が損なわれるおそれもあるとの懸念が示され、日本弁護士連合会をはじめとして多くの団体から反対意見も出されている。また、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」というあいまいな表現による網羅的な規制に多くの国民からも強い懸念が示されている。
 
 以上の状況を踏まえ、以下質問する。
 

本改正の契機となった第三十三次地方制度調査会の「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」では、コロナ感染症への対応に問題があったことが記載されているが、同記載内容を前提とすれば、個別法の改正によって対応が可能と思われる。この点について、自治事務に関する国の一般的指示権が必要である根拠が見いだせない。「対等・協力関係」に位置付けた国と地方公共団体の関係に特例を設けるに至った具体的な事情は何か、説明されたい。
 

本改正案は、国と地方自治体の関係を大きく変容させることにつながり、慎重な検討や自治体関係者、地方住民を包含しての議論が前提となるべきものである。政府は、本改正案の提出に至るまでに、どのような検討及び全国知事会や市町村長関係団体との意見交換、公述意見の聴取などを行ったのか。また、本改正案提出にあたって、災害対策基本法や感染症法など既にある個別法の改正で対応ができるか否かの検討はされたのか、政府の見解を示されたい。
 

「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の具体的な想定について、内容を明らかにされたい。
 

本改正案では、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生する場合だけでなく、「発生するおそれがある場合」においても、適用されるとのことである。この「発生するおそれがある場合」とは、誰がどのような基準で判断するのか、政府の見解を示されたい。
 
 右質問する。

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