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2024.05.10

浮体式洋上風力発電の可能性について考える|はやしもと光広

 参政党は自然と景観を損ね、近隣住民に危険を及ぼす可能性のある大規模太陽光発電所の開発には慎重な姿勢をとっている。太陽光パネル生産時にCO2を排出することや安全な廃棄方法が確立されていない現状は、経済が優先されており、環境負荷が大きく、地球に住まわせていただいているという人類として謙虚であるべき姿勢が感じられない。
 そんな中、太陽光発電はもう古いという理由で、風力発電所の開発を進めている企業もある。風力発電の問題点としては、輸入した巨大な風力発電機器を設置するために、原生林を破壊して景観を損ねるだけでなく、生態系にも影響を与え、騒音や振動、低周波音などによる風車病といわれる健康被害や、風車からの出火等も懸念されている。また、国防上の観点からは、自衛隊のレーダー運用に支障があることも指摘されている。
 しかしながら、脱炭素や再生可能エネルギーへの転換といった、世界の潮流の中において、すべてを否定し続けるのは現実的ではない。今回は私なりに許容し得るものを見つけたので報告したい。
 
 令和6年1月下旬に浮体式洋上風力発電の視察のために九州大学洋上風力研究教育センター(福岡県春日市)と、みなと100年公園(福岡市)を訪れた。
 
■九州大学洋上風力研究教育センターの取組みについて
 我が国は40年以上前から風力発電システムを開発してきたが、2019年には主要な大手企業はほぼ撤退した。撤退理由は、我が国の風況の過酷さ(安定した風が得られず、台風等の突風もある)、設置に伴う調整が困難、国内市場の限界がある。2020年12月洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会(経産省・国交省)が「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を発表。現状、洋上風力産業の多くは国外に立地しているが、日本にも潜在力のあるサプライヤーは存在。しかしながら、日本特有の過酷な風況及び社会環境の課題は残されたまま、海外で製造された洋上風車の導入が進んでいる。
 
 そんな中で「九州大学ビジョン2030」に基づき社会変革を起こすべく、ハード及びソフトウェアの開発により、研究・教育→産学官・学際連携→実証→実装・展望を行っている。具体的には日本の風況に合った中型レンズ風車(静粛性・発電効率向上・バードストライクなし)の開発と実用化を進めており、また、我が国沿海の海況に合った浮体の開発を行っている。一方で人財育成は遅れており、我が国ではまだ未成熟な分野であるため、学生の多くは卒業後の進路に風力を選択しない事が今後の課題である。
 
浮体式洋上風力発電の可能性について考える|はやしもと光広九州大学洋上風力研究教育センター(出典:同センターHPより)

浮体式洋上風力発電の可能性について考える|はやしもと光広レンズ風車の特徴(出典:リアムウィンド社HPより)
 
■実物を観て
 平成23(2011)年12月4日に環境省事業「博多湾浮体式海上風力発電の実証実験」で博多湾に設置された六角形のコンクリート製浮体と九州大学が独自に開発した高効率の3kWレンズ風車2基と2kW太陽光パネル(8kWの小型浮島エネルギーファーム)を見学したが、浮体の直径は18m、風車の高さも10m程度と思ったよりも小さく、小型船舶が停泊しているようなイメージだった。沖の方に目をやると、大型のタンカーが停泊しており、そちらの方がよほど環境に負荷をかけていると感じた。
 
 なお、実証実験が行われたのは、現在設置されている場所より、もう少し沖の方で、国からの研究費には維持管理や撤去に伴う費用は含まれておらず、実験事業終了後は漁協が譲り受け、現在の多々良川河口に移設、牡蠣の養殖に活用されている。洋上風力発電所は、魚の漁礁になるものの、漁師からは網が引けない等、邪魔になりがちだが、漁師の高齢化が進み、漁業が衰退している港湾であれば、洋上風力の候補地としては有力になる。
 
浮体式洋上風力発電の可能性について考える|はやしもと光広多々良川河口に移設された浮体式洋上風力発電所をみなと100年公園から見る
 
■国内産の可能性について
 海外製の巨大風車を使用した洋上風力と異なり、騒音や振動の問題、人体や動植物、生態系、漁業への影響が限定的であり、再生可能エネルギーの中では選択肢のひとつとして検討に値すると思われ、内製できれば、アジアへの輸出展開の可能性も見込め、経済効果も期待できる。あとひとつクリアしなければならないのは、洋上で発電できた電力をどのように陸地へ繋げるのかという課題はあるが、日本の技術に期待をしている。
 

はやしもと 光広
Hayashimoto Mitsuhiro
浮体式洋上風力発電の可能性について考える|はやしもと光広
所属議会
和歌山市議会議員(和歌山県)
 
経歴
追手門学院大学文学部心理学科 卒業
国立療養所近畿中央病院附属 リハビリテーション学院理学療法学科 卒業
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