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2024.05.24

国語教育政策と言語文化としての日本語の継承に関する質問主意書

令和6年5月23日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『国語教育政策と言語文化としての日本語の継承に関する質問主意書』
 
 平成十八年の教育基本法改正により、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」が教育目標として定められた。平成二十年の中学校学習指導要領解説国語編では、「我が国の歴史の中で創造され、継承されてきた伝統的な言語文化に親しみ、継承・発展させる態度を育てることや、国語の果たす役割や特質についてまとまった知識を身に付けさせ、言語感覚を豊かにし、実際の言語活動において有機的に働くような能力を育てること」が強調されている。平成三十年の高等学校学習指導要領解説国語編では、生徒が「現代社会に生きて働く言語の価値に重点を置き、理解したり尊重したりすることにとどまることなく、自らが継承、発展させていく担い手としての自覚をもつこと」を目指すこととされている。
 
 しかし一方で、現在、初等・中等教育及び高等教育の全ての段階においても、グローバル化を反映して英語教育を推進する傾向が強い。その結果、日本人大学生の日本語語彙力の低下が深刻な問題となっており、多くの大学において初年次教育やリメディアル教育に注力せざるを得ない状況となっている。
このように、日本人学生に対する国語教育の強化が教育の各段階で一貫した課題となっている一方で、外国人留学生の増加に対応するため、外国人に対する日本語教育の整備が進められ、登録日本語教員の国家資格化を軸とした政策が推進されている。
 
 しかし、本筋である日本人に対する母語としての国語教育の問題に関しては、重点的な議論が行われていない。これでは、日本語教育の在り方としては本末転倒である。
 
 さらに、この間の研究及び学校教育の展開の中で、英語の論理構造を基準に日本語を捉えようとしてきた結果、日本語があいまいで非論理的な言語であるかのような誤解が広まってしまっている。
 
 最新の言語科学における研究成果を学校教育に取り入れることで、日本人が正しい日本語力を培い継承していくとともに、自国の言語文化に対する誇りと自信を取り戻すことが期待される。重要なことは、文学ではなく言語としての日本語を学べる国語授業の提供や、英語の論理に基づいた従来の国語文法の見直しである。伝統的な日本語の継承と発展を目指し、日本人が母語としての日本語を客観的に学び直す機会の提供が不可欠である。このような取組により、国民一人一人が帰属する言語文化への自覚を深めることが可能となる。さらに、英語基準の言語観からの脱却と、日本語の普遍性と独自性の理解と活用は、我が国の言語文化としての日本語の存続と発展に寄与する。日本人に対する日本語教育の体系的な位置付けと、政策としての推進が必要ではないか。
 
以上を踏まえて、質問する。
 
 
改正された教育基本法に基づいた、自国の伝統的な言語文化に親しむ教育とその継承・発展のための教育の実践に関して、具体的な取組と成果を示されたい。また、教育現場における日本語文化の教育内容を豊かにするための具体的な政策や支援策はあるか示されたい。
 
 
伝統的な言語文化としての日本語の継承と発展のために、日本人が学ぶ日本語を教育課程に体系的に位置付け、自国語に対する国民の真の理解と誇りが自覚できるような取組を推進していくべきと考えるが、これに関する政府の見解を示されたい。
 
 
政府はこれまで、高等教育課程における日本人学生の日本語力の状況を過去、どのように評価してきたか。また現状を踏まえ、どのような方向性を推進していく考えか示されたい。
 
 
学校卒業後も地域社会や国際社会に貢献する人材を育てるためには、英語教育の推進とともに、同程度かそれ以上に、高等教育課程において日本語重視で教育方針を立てていくことが必要不可欠であると考える。政府においてはどのような方針を持っているか示されたい。
 
 
政府は、学校教育並びに社会教育、研究分野において言語文化としての日本語の普及と発展に向けた長期的なビジョンを有しているか。今後十年間にわたって推進していく目標はあるか示されたい。
 
 
他国の言語政策と比較して、日本の言語教育政策が直面している独自の課題は何か。これらの課題を克服するための具体的なアプローチを示されたい。
 
右質問する。

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