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2023.04.27

【質問主意書】 経口中絶薬に対する懸念と性教育に関する質問主意書

令和5年4月26日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。

『経口中絶薬に対する懸念と性教育に関する質問主意書』

令和五年四月二十一日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会薬事分科会は、国内初の人工妊娠中絶のための飲み薬「メフィーゴパック」(以下「本薬」という。)の製造販売の承認を了承した。これについて、厚労省が近く承認する見通しであるという。

本薬の製造販売承認に関するパブリックコメントは、分析や対応のために審議を延期せざるを得ないほど多くの一万二千件を超える意見が寄せられた。また、厚労省の庁舎前では承認反対を訴える人々によるハンガーストライキも行われており、「命の取扱い」に対して懸念を抱く国民の声は少なくないことがうかがえる。

生命倫理の観点から、中絶決断のハードルは高くあるべきである。望まない妊娠を防ぐためには、性教育やアフターピル(緊急避妊ピル)の使用、強制性交等被害者に対する支援などの方策を充実させることこそ重要であり、中絶を決断するハードルを下げることが問題の解消となるような方策は望ましいものではない。

この点、パブリックコメントに際し示された本薬の管理方法案には、「本剤販売当初は国内での経口中絶薬の使用経験が乏しいことを考慮し、十分な使用経験が蓄積され適切な使用体制が整うまでの間、有床施設において外来や入院で本剤が使用されるもの」とあり、使用体制が整った後は、ベッドがない施設に使用範囲を拡大する方針であることが読み取れる。また、公益財団法人日本産婦人科医会も同様の運用を希望していると承知している。

これらに鑑みれば、本薬がひとたび導入されれば、使用範囲が拡大されることは既定路線と言える。さらに、国際基準に基づき女性が利用しやすい管理方法とすることを求めるとの意見に従えば、使用は外来診療が中心となり、医師の面前での服用も不要となり、服用者が自己管理下での運用が可能となり得るものと思われる。結果として「手軽な運用」が可能となる中、中絶決断のハードルが下がり、また、日本の中絶費用が高額であるとの意見もあいまって本薬の使用が急速に広まる可能性があると考える。また、本薬の使用について国からの補助を入れることになれば、多額の税金が海外医薬品メーカーの利益に供されるという流れとなる可能性も否定できない。

一方、日本では麻酔下において短時間で安全に中絶手術が行われており(例えば、中絶手術の合併症頻度は米国に比べ二分の一以下とも四分の一とも言われる)、本薬を使用したとしても、約一割の人が手術を必要とするようになることからすれば、現段階で本薬を導入するメリットは大きくないように思われる。

以上の認識に立って、質問する。

一 パブリックコメント募集に際し示された本薬の添付文書案によれば、ミフェプリストン投与からミソプロストール投与後二十四時間までに人工妊娠中絶が成功した被験者の割合は、九十三・三%と報告されている。この点、我が国では、初期中絶手術が百%に近い成功率であるのに比べて、六〜七%の失敗率は非常に高いと言えるが、政府の認識を示されたい。

二 本薬の使用による副作用は、腹痛や吐き気・嘔吐のほか、中には発熱や出血が報告されている。この点、多くのケースでは、腹痛とともに二週間近い出血が続くと言われ、大量出血のリスクを伴い、外科的処置を要する場合もあるという。患者の身体への負担が大きいことは明らかである。これらのデータについて政府はどう評価しているのか、データを含めて具体的に示されたい。

三 本薬の使用に当たっては、患者が心理面でも、服用後の出血に強い不安を抱き、排出物も大きな血塊や胎児に近い状態の排出物を目の当たりにすることで、患者が強い精神的負担を感じる懸念もある。これらを鑑みれば、本薬を使用することにより中絶という行為を二週間近く継続的に体感するよりも、医師の管理の下、麻酔を用いて行われる中絶手術の方が身体的にも精神的にも負担が少ないのではないか。これらについていかなる検証を行ったのか、具体的に示した上で政府の見解を示されたい。

四 本薬の製造販売が承認されるとした場合、本薬の使用に当たって安全性が担保される環境(病院、医院での服用指導から家庭での使用の安全性を図れる環境の在り方)をどのように考え、整備されるべきと考えるか政府の方針を示されたい。

五 本薬については、「飲む中絶薬、新たな選択肢 NPO「女性の負担減る」 国内初、厚労省春にも最終判断」(令和五年一月三十一日の毎日新聞)などと報道されており、本薬が中絶手術よりも負担が少ないという認識が広がっている。しかし、前述のとおり、本薬が中絶手術に比して「女性の負担が減る」と言えない側面も多々存在すると考える。政府は、「内服薬で中絶できるから女性の負担が減る」という認識についてどう評価す
るか。本薬を使用すれば中絶手術よりも女性の負担が減ると考えているか。具体的な根拠を示して説明されたい。

六 パブリックコメント募集に際し示された本薬の概要には、「本剤による人工妊娠中絶は、緊急時に適切な対応が取れる体制を構築している医療機関で行う。なお、公益財団法人日本産婦人科医会との協議において、本剤販売当初は国内での経口中絶薬の使用経験が乏しいことを考慮し、十分な使用経験が蓄積され適切な使用体制が整うまでの間、有床施設において外来や入院で本剤が使用されるものとされた」との記載がある。政府としては、十分な使用経験が蓄積され適切な使用体制が整えば、無床施設においても使用
の範囲を拡大するとの方針であるように受け取れるが、そう考えてよいのか。また、「十分な使用経験が蓄積され適切な使用体制が整う」という条件の具体的な在り方を示されたい。

七 国立保健医療科学院が実施した「人工妊娠中絶の実態に関する調査」では、第一回の妊娠で中絶をした人の中絶理由の半数近くは、「未婚」であったことを理由としている。次いで「予定外の妊娠」、「経済的理由」が多く、これら三つの理由だけで全体の七十%を占める。また、日本産婦人科医会医療対策委員会が実施した「十代の人工妊娠中絶についてのアンケート」では、昭和五十年までは全中絶件数の一%台だった十代の中絶が、昭和六十年には五・一%、平成七年には七・六%、平成十三年には十三・六%と増加し、平成七年以降は十代の占める割合だけではなく、その件数も増加している。望まない妊娠をした場合は経口中絶薬で対応すれば良いという安易な風潮を作らないためにも、避妊の知識や望まない妊娠の予防についての教育をしっかりとしていくことが優先されるべきであると考えるが、望まない妊娠を予防するための教育を充実させる点で具体的にどのような方針を立てているのか、示されたい。

八 本薬のような中絶薬を服用することで、簡単に中絶ができるわけではなく、失敗率や危険性をしっかりと理解して選択できる自己判断能力を養うことが大切である。「異次元の少子化対策」を掲げる政府としては、中絶の件数を減らすためにどのような施策を講じるか具体的に示されたい。また、青少年に対する妊娠・中絶に関する性教育をどのような内容で進めていくのかについても示されたい。

右質問する。

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