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2023.05.17

【質問主意書】 日本政府の半導体政策に関する再質問主意書

令和5年5月17日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。

『日本政府の半導体政策に関する再質問主意書』

四月七日に提出した「日本政府の半導体政策に関する質問主意書」(第二百十一回国会質問第五一号。以下「質問主意書」という。)に対する四月十八日付けの政府答弁書(以下「答弁書」という。)は、質問に対して必ずしも真摯に回答しておらず、少なからず論理的に矛盾した内容となっている。

現下の半導体不足による製造業の甚大な経済損失の重要性に鑑み、特に答弁書において看過できない問題点に焦点を絞って、改めて以下質問する。なお、質問の要点に対して必ずしも明確な回答が行われず、又は回答内容に論理的な矛盾が認められる場合には、国民からの負託に応えるため、再度質問主意書を提出せざるを得ないことに留意されたい。

一 半導体政策の立案・決定プロセスについて

政府が国家的な課題解決に取り組む場合、現状を適切かつ定量的に把握・調査し、その原因を分析し、それに対する複数の解決策から最も効果的かつ適切な方法を検討し、政府の政策として実行していくことが必要である。

しかし、日本政府が当然実施しなければならない政策の立案・決定プロセスについて、答弁書「一について」では、米国政府や日本の民間シンクタンクが必要な検討を実施しているにもかかわらず、「半導体の供給不足が自動車の生産に及ぼす影響について定量的にお示しすることは困難」と回答するのみで、安易に分析を断念していると考えざるを得ない。

他方で、「国内産業への半導体の安定的な供給に向けては、半導体の国際的な需給の動向等を適切に把握しつつ、国内の製造基盤強化に向けた補助金による支援等の施策を戦略的に講じて」いるとしているが、答弁書「二の5について」においては、現状の半導体の供給過剰の状況について適切な分析を行わず、半導体の国際的な需給の動向等についても適切な把握がなされていないことが明らかになっている。

国内の製造基盤強化に向けた補助金による支援等の施策は、現状の課題を適切かつ定量的に把握・調査するとともに、その解決策としての有効性を厳格に分析し、最適案を選択しなければならない。特に補助金による支援先の選定及び補助金の額については、こうした適切かつ厳格な政策立案・決定プロセスを通じて決定されなければ妥当性を欠いてしまい、国民の血税を投じた施策は効果がなく膨大な無駄遣いとなってしまう。

以上のことから、令和三年度から政府が決定した半導体政策のうち、特に特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(以下「5G促進法」という。)に基づく支援策については、政策の立案・決定プロセスが完全に間違っているものと認めざるを得ない。この点について政府の見解を示されたい。

二 5G促進法に基づく半導体政策の妥当性について

1 答弁書「二の1について」において、5G促進法第十一条第一項の特定半導体生産施設整備等計画の認定に係る形式的な手続については例示しているが、同条第三項第一号に規定する「計画の内容が指針に照らし適切なものであること」については言及されていない。

特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等の促進に関する指針第三の二の規定によると「特定半導体生産施設整備等は、国際的に特定半導体の生産能力が限られている状況においてもその需給の変動に対応できるよう我が国の技術の向上により特定半導体の国内における安定的な生産を確保すること、及び我が国における特定半導体の生産に関係する産業の発展に資すること」とされており、特定半導体の国内における安定的な生産を確保するための「我が国の技術の向上」の担い手は、明らかに外資系企業ではなく我が国に帰属する国内企業でなければならないとしている。

このことは、5G促進法第一条に明記されている法律の目的を達成するためには、国内に工場があるだけでなく生産技術が我が国の国内企業で保持されることが必要であることを裏付けている。
特定半導体生産施設整備等計画の認定の申請があった場合に、5G促進法第十一条第三項に適合すれば、いずれの国の事業者でも認定するとの政府の見解に従えば、国内に工場を持つならば外国企業又は外資系企業の技術も「我が国の技術」と定義されているかのようにみられるが、この点について政府の見解を示されたい。

2 答弁書「二の2について」において、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課していない理由として、マラケシュ協定附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十一条の規定を根拠としている。

しかし、特定半導体が逼迫し国内の半導体購入企業に優先的に供給することが求められる事態とは、半導体の供給逼迫により日本国内の製造業が危機的な状況に追い込まれている事態にほかならず、まさに同協定第十一条第二項(a)に規定する「食糧その他輸出締約国にとって不可欠の産品の危機的な不足を防止し、又は緩和するために一時的に課する」必要がある状況である。

したがって、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課すことができない理由には当たらないと考えられるが、政府の見解を示されたい。

また、特定半導体生産施設整備等計画は、特定半導体等の需給が逼迫した場合における増産、特定半導体等の生産能力を強化するための投資及び研究開発その他特定半導体の国内における安定的な生産に資する取組が行われると見込まれる等を認定の要件としているが、当該事業体が、特定半導体等の需給が逼迫した場合に日本企業への優先的な供給を行わず、国際的な半導体市場に高値で販売するという利益優先の企業行動を行った場合は、日本の国内産業を救済し、経済安全保障に寄与することにはならない。

特に、答弁書で回答されているように、政府がマラケシュ協定により国内向けに優先的に出荷する義務を課すことができないとしている以上、仮に政府からの要請を受け、日本の顧客向けの供給拡大について誠実に協議に応じたとしても、一般的に株主利益を優先する傾向が強い外資系企業である当該事業体が、利益確保よりも国内向けに優先的に出荷することを選択する可能性は低いと考えられるが、政府の見解を示されたい。

3 答弁書「二の3について」において回答されているように、TSMC等に係る計画の認定により、我が国における半導体企業の関連産業の集積や人材の育成等に資する効果については、一定程度の効果は見込まれるが、これらの外資系企業への支援は、競合する国内の半導体企業の競争力を阻害することになるのではないか。外資系企業への支援が国内産業の国際競争力の強化と特定半導体生産に関係する産業の発展に資するとの基本理念と矛盾しているのではないか。

その点について政府は何ら言及していない。前者の効果が日本の半導体企業の競争力を阻害するという負の影響を上回るような支援策、または負の影響を補完し軽減するような政策が採られる予定があるのか、政府の見解を示されたい。

4 以下の四点について、政府の見解を示されたい。

(一) 質問主意書でも言及しているように、二〇二〇年一月から二〇二三年二月までの用途別及び種類別の日本国内と世界の半導体の需給バランスのデータに係る我が党から経済産業省への問合せに対して、「お示しできる用途別、種類別の日本国内および世界の需給バランスに関するデータを保有していない」と回答したことを踏まえれば、政府はTSMC等が国内工場で生産予定の特定半導体について需給状況の推移を把握していないと考えざるを得ない。他方で、答弁書「一について」においては、政府は「半導体の国際的な需給の動向等を適切に把握」するとしており、これら答弁書の回答は、論理的に矛盾している。

(二) 答弁書「二の5について」において、「供給過剰」の意味することが必ずしも明らかでないとしているが、二〇二三年一月四日付日経新聞電子版は「半導体の供給過剰、解消は二十三年秋以降 車向けは逼迫続く」と報じている。また、二〇二三年一月二十四日付JETROの地域・分析レポートによると、二〇二三年の集積回路(IC)の製品別市場予測では、「メモリーICが前年比十七・〇%減と大きく落ち込む一方、ロジックICは同一・二%減、マイクロICは同四・五%減」となっており、「メモリーIC大手の米国マイクロンテクノロジーや、日本のキオクシアも、市況の悪化を受けた生産調整や投資の抑制に動いている」としている。

さらに、二〇二三年一月十二日付ロイター電子版によると、TSMCも「二十三年の設備投資計画を前年比で減額」としている。これらの報道を踏まえれば、5G促進法に基づいて支援が行われるTSMC等三社で生産される予定の特定半導体は現時点で明らかに供給過剰になっているとみられ、現下で不足しているのは、TSMC等三社では生産される予定のない車載半導体等のレガシー半導体であることは明らかである。

(三) 答弁書「二の5について」では、特定半導体について、事業者が需給の動向を適切に踏まえつつ生産を行い、国内で安定的に供給されることが重要だとする一方で、答弁書「二の2について」で「法は、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課してはいない」と回答するなど、供給過剰への対応についての当事者任せの姿勢は、国民の目線から見れば、政府は政策決定者としての責任の自覚に欠けていると感じざるを得ない。

(四) 二〇二二年四月二十六日の参議院内閣委員会経済産業委員会連合審査会において、萩生田経済産業大臣(当時)は、我が国の半導体産業凋落について「原因の一つは当時の政府が世界の半導体産業の潮流を見極めることができず、適切かつ十分な施策を、政策を講じてこなかったこと」であると反省の答弁を行っている。

東芝が半導体部門を売却し、キオクシアが外資系企業とならざるを得なかったのは、東芝による米国ウェスチングハウス社の買収の失敗が遠因となっており、その買収には経済産業省が深く関与していたともメディアで報道されている。

半導体政策については、萩生田経済産業大臣も認めているように、日本政府は過去において数々の失策を重ねてきた。今回の5G促進法に基づく半導体政策が、過去の轍を踏んで、国内の半導体企業の競争力を阻害することで更に弱体化させつつ、税金を使って外資系企業を支援して余剰な半導体を製造させることにならないか懸念される。

  右質問する。

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