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2023.05.29

LGBT理解増進法案に関する見解

 現在国会に提出されている「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」案は、G7に間に合わせることを目的に拙速な議論が与党でなされたに過ぎないものであり、この課題が抱える多くの論点について慎重な検討が欠けている。

 法制化を検討するにあたっては、広く国民の意見を反映させるために十分な意見の聴取の機会を設けることが重要であり、具体的な問題に焦点を当て、実生活の課題から解決策を見つけるべきである。

 しかし、本法案は、そのような議論のないまま、「性的指向及び性同一性の多様化を受け入れる精神を涵養し、もって性的指向及び性同一性の多様性に寛容な社会の実現に資すること」を立法趣旨とし、事業主や学校における教育や啓発の実施、環境整備等を求める内容となっているほか、毎年1回、政府が施策の実施状況を公表する内容となっている。

 そもそも、立法趣旨に記載されている「涵養」の意味は、「水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てること」を指す。しかし、現状は、「涵養」とは逆方向へ進んでいるように思われる。

 拙速な法制化の進行により、価値観の押し付けに対する懸念や性犯罪の増加に対する不安、スポーツ界におけるジェンダー問題など諸外国が直面してきた社会的混乱が日本でも生じるのではないかという社会的不安が広がっている。これにより、これまで法案の存在がなくても平穏に暮らしてきた性的少数者の方々が逆に不快な目で見られ、却って社会の分断が生じる懸念も生じている。具体的な道筋を持たずに法制化が進められれば、現場は混乱し、法律の趣旨から逸脱した過剰な主張や要求が広まって、上記のような社会の混乱を引き起こす可能性も懸念される。

 いわゆる性的少数者の方々が直面している問題を理解すること、彼らを差別することは許されないとの認識をもつことは大切なことである。

 日本国憲法は、14条で法の下の平等を定めている。報道で「G7の中で唯一、同性カップルに対して国として法的な権利を与えず、LGBTQに関する差別禁止規定を持たない」などとされていることは、事実誤認である。
現在、世界的にも差別禁止との規範が女性の立場を傷つけるなどとして、様々な問題や混乱が生じており、アメリカなどでは、見直しへと方向が転換する動きもみられる。

 精神の涵養とは、決して押しつけであってはならないはずである。大きな価値観の転換につながる理念法を作るならば、なおさら慎重に時間をかけて練り上げるべきである。

 以上のことから、参政党としては、議論・検討が不十分な本法案に反対の立場である。

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