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2023.06.08

【質問主意書】 外国資本による日本企業合併及び買収に関する質問主意書

令和5年6月8日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『外国資本による日本企業合併及び買収に関する質問主意書』
 
 政府は、平成二十六年四月二十五日に第一回対日直接投資推進会議を開催して以降、外国資本の我が国への直接投資を推進してきた。人口減少が進んでいる現状において力強い成長を実現するためには、対日直接投資を活用し、海外活力を大胆に取り込んでいく必要があるというのがその理由である。
 
 政府は、令和三年度に政策目標として、令和十二年に対日直接投資残高を八十兆円にするとの倍増目標を設定し、令和四年度には、日本企業の外資の出資受入れや、事業売却等を検討するガイダンスを作成するなどして対日M&Aの活用を促進してきた。また、令和五年四月十九日には、海外のファンドによる日本企業の買収例を取り上げた「対日M&A活用に関する事例集」を発表した。政府は、この事例集を「海外資本を活用して、企業変革・経営改善・飛躍的成長につなげた日本企業のケーススタディ」と紹介している。
 
 これらに関連して、萩生田経済産業大臣(当時)も、令和四年四月二十七日の経済財政諮問会議において、先端半導体や洋上風力などへの海外からの投資拡大や海外スタートアップの誘致、内外企業の協業支援の強化、外国資本による日本企業の経営参画を円滑化する取組を進めることを明らかにした。
 
 しかし、実態的に見るなら、これは政府自らが「日本の身売り」を推進しているに過ぎないということではないか。
 
 外国資本による日本企業買収の最大の課題は、外資系に変わった日本企業が生み出す付加価値の全てが外国のものになることである。賃金こそ日本人従業員に支払われるものの、税引き後の利益は全て配当金として海外移転することになり、それが国内での投資拡大や富の蓄積につながらず、「資本空洞化」というべき循環が生まれることになる。さらに、日本企業が長年築いてきた経験やノウハウも全て外国に流出してしまうこともしばしばである。
 
このように、日本人は労働力のみを提供しながら、企業による生産、活動の成果がほとんど海外に持ち去られるという在り方は、日本を事実上の「経済的植民地」に落とし込むことに等しく、やがては日本の産業基盤の掘り崩しで、富の蓄積と分配が国内に薄いものとなり、国全体の疲弊を招くことになることを危惧させる。
 
そこで、以下質問する。
 
 外国資本の手を借りて日本経済を成長させても、労働対価支払以外の利益から日本国民が疎外されれば、豊かな生活の実現は遠ざかり、やがては国民の生命、財産、国益を守り抜くことは困難になるのではないか。そもそも政府は、日本経済全体の成長力を強化し、地域経済の活性化を行うという目標において、国民所得の上昇、産業基盤の強化、社会福祉制度の充実をどのように図っていくのか具体像を示し、外国資本による日本企業買収をその中でいかなる位置付けに置いているのか示されたい。
 
 萩生田経済産業大臣は、令和四年四月二十七日の経済財政諮問会議において「経済安全保障に留意しながら、外国資本による日本企業の経営参画を円滑に進める方策について検討する」と述べている。政府は、外国資本による日本企業の経営参画を円滑に進めることが、どのように経済安全保障に貢献すると考えているのか。国益との両立をどのように図るのかを具体的に示されたい。
 
 経済産業省が作成した「対日M&A活用に関する事例集」では、外資系PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)が日本企業をM&Aをすることを推奨している。
PEファンドは、機関投資家や個人投資家から集めた資金を非上場企業に投資し、企業価値を高めるためにリストラや資産売却、経営者派遣などを行い、その後、買収した企業を売却して出資者に利益配当することを目的とした投資組合である。PEファンドは、出資者に配当できる利益を最大化することを目指していることからすれば、このようなM&Aを推奨すれば、当該日本企業で働く労働者の多くが職を失い、その手当に国全体が追われることとなりながら、一方で企業そのものは転売の対象とされて「転売益」目当てで転がされてしまう可能性が極めて高い。この点について、政府は、どのような予測を行っているのか。
 
 「対日M&A活用に関する事例集」の作成者には、PEファンドによる日本企業へのM&Aが増加することで、ビジネス上のメリットを得ることができる外資系PEファンドやM&Aに関わる助言を行うことが収入となる法律事務所、M&Aの手数料を得ることができるM&A仲介会社などがいる。経済産業省は、日本企業の利益に立つのではなく、日本企業買収で利益を上げようとする外国資本のための手引きを外国資本側の代理人たちが作成することを手助けしていることにならないのか。事例集の中立性、透明性の確保を図るために、作成者の選定や情報の信頼性を日本の国益、日本企業や労働者の立場、利益に立って精査すべきと考えるが、どのような措置を採ったのか、具体的に示されたい。
 
右質問する。

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