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2022冬期北京オリンピック

2021/08/15 山下 政治

 

2022冬期北京オリンピック

 

チャイナウイルスで世界中がパンデミックのなか、東京オリンピックが異例の1年延期&無観客にて開催され、そして無事に終了した。 まずは2020東京オリンピックを無事に終えられたことについて関係者各位にご苦労様でしたと言いたい。

 

無観客のなかであってもアスリート達は見事な競技・競演を行い世界中に感動・感激を与えた。日本選手の大活躍もあっぱれだった。 開催前は東京オリンピックの中止を求める活動家がデモ行進したり罵声をあびせたりの醜態をさらしていたが、始まってみれば国民が一体となって東京オリンピックを盛り上げたのではないだろうか。

 

惜しむらくは57年ぶりの日本開催であったにもかかわらず無観客開催のため我々視聴者がテレビ観戦のみを強いられたことだ。 小中学生たちにせっかく世界中から集まった選りすぐりのトップアスリート達の競技・競演を直接見せることができなかった。 残念でならない。

 

 

さて、夏季・冬期とも4年に一度開催されるオリンピックだが、夏季・冬期通期でみると2年ごとになる。 2020東京オリンピックは1年延期されたので2021年となり、翌2022年は北京での冬期オリンピックが開催される予定である。つまり来年はまたオリンピックというわけだ。

 

しかしこの2022北京オリンピックは物議を醸し出している。 その理由は言わずと知れたチャイナ共産党による人権侵害問題である。 オリンピックは平和の祭典であるのにチャイナ開催して本当にいいのか、との世論が出ている。

 

筆者6月の記事にも書いたが「『ウイグル人への拷問、大量監禁、レイプ、強制不妊手術などの惨状は、過去の専制君主の不朽の手法だ。』 と American Enterprise 研究所はチャイナの蛮行を指摘しており[1]」 2022北京オリンピックの開催の是非を巡って、ボイコットすべき、いやすべきではない、いかにボイコットするか等々米シンクタンクのレポートを紹介しながら考察してみよう。

 

 

まず、各レポートではチャイナのウイグル人に対する人権侵害について一様に把握しており非難しているという点は共通している。

 

その上で、米外交問題評議会は「北京オリンピックに参加することは、これらの虐待を見て見ぬふりをすることであり、『中国共産党の権威主義的な支配を支持している』 とみなされる可能性があると主張[2]」 しているが、その一方でボイコットは果たして効果があるものなのか、とも自問しており「ボイコットはさまざまな形で影響を与えるがそのほとんどが間接的で比較的長期間に及び時には逆効果になることもある[2]」 と分析している。

 

実例としてアフガニスタン侵攻を理由に1980年モスクワ大会を西側66カ国がボイコットしたがソ連のアフガニスタン撤退はなく1984年LA大会では規模は小さいが返り討ちボイコットにあっているという例を挙げている。

 

 

同評議会はボイコット対応に関して以下の提案をしている。

 

●世界の指導者やその他の政府関係者が参加を拒否する外交ボイコット。

 

●2022年のオリンピックを他国に移転。

 

●アスリートによる抗議活動。 IOCは禁止しているがアスリートが自ら試合をボイコットしメディアの注目を浴びる政治的な発言をする。 米オリンピック・パラリンピック委員会はこれに対して制裁はしないとしている。

 

●スポンサー企業の支援撤回。

 

 

「これに対して中国は多方面での報復をしてくるであろう。 国際会議への参加を停止したり、貿易を妨害したり、外国の政府関係者に制裁を加えたりする可能性がある。 実際、近年、中国が外国の行為を不服として報復した例は枚挙にいとまがない。[2]」

 

結論は出していないがボイコットする材料を提示することになる。

 

KATO研究所が5月に出したレポートでは外交ボイコットを主張するナンシー・ペロシ下院議長の主張を引用し、「『中国で開催されるオリンピックを何の問題もないかのように進めることはできない。』と述べ、ペロシ氏は、中国政府による新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人に対する深刻な人権侵害の疑惑に触れ、アメリカ人選手の大会参加を阻止するのではなく、民主主義国の指導者が不快感ゆえに大会参加を拒否する『外交的ボイコット』を推奨している。[3]」

 

またユタ州のミット・ロムニー上院議員の主張も引用し、「『利益を気にして中国の虐待を見て見ぬふりをしている』オリンピックスポンサーを非難した。さらに、『商業的な理由で中国の人権侵害に声を上げなければ、どこの国でも人権のために声を上げる道徳的な権限を失うことになる』とも述べている。[3]」 と外交ボイコットと商業ボイコットを優先すべきとの主張だ。

 

しかし、いずれのボイコットにしろ「米国の政治指導者や人権団体は満足するかもしれないが、米国とその同盟国がオリンピックに関して何をしても、北京の人権政策を変えることはできないだろうというのが、残酷な現実である。[3]」

 

ボイコットは決して政治的解決にならないことを冷静に判断しているのである。

 

 

さらに同じKATO研究所が2月に出したドグ・バンドウ氏のレポートでは、トム・マリノウスキー下院議員の主張を引用し「ある政府をジェノサイドと非難するのであれば、その国で普通の場所であるかのようにオリンピックを開催することはできません。[4]」 と開催国の変更を主張している。

 

「この10年余りの間に世界最高峰のスポーツイベントを世界で最も抑圧的な国の一つに2度も割り当てることになったのだから、開催資格のルールを見直す必要があるだろう。[4]」 とIOCのオリンピック開催国の選定に問題があるとの主張だ。 「すでに共和党の議員たちは、IOCに対し、北京での開催を取りやめるよう求める決議案を提出した。 [4]」 しかし、開催国は多大な投資をし大会前1年を切っており開催国変更をIOCは否定している模様だ。

 

このレポートはボイコットしてはいけない理由を以下の6項目で説明している。

 

●「在中国EU商工会議所の会長は『欧州の大使や友人たちと話をしたが、中国に対してボイコットをしようという意欲はゼロだ』 とワシントンポスト紙に語っている。[4]」 となるとアメリカが一国だけ北京五輪に参加しないことで正義感を感じる人もいるかもしれないがそれは逆効果である。「単独行動はアメリカの孤立感や無力感を際立たせ、将来的な連合関係の構築をより困難にしてしまう。 すると最終的に北京は自らの悪業に立ち向かう準備が誰にもできていないことを確信し、勇気づけられてしまう。[4]」

 

●次に、ボイコットを率先して推進してくれる人がいるかどうか。「誰も米中の板挟みにはなりたくない。特に、ワシントンが推進するキャンペーンは、新たな冷戦の一部と見なされる[4]」 ためボイコットを推進する国は米国以外では日本だけだろうか?

 

●第三に、「2022年の大会を辞退することで、北京の人権侵害を訴える機会が減るのではないか。オリンピックには膨大な数の外国人が参加し、多くのメディアが報道する。 政府や選手は、この大会を利用して中国の不正行為を強調することができるだろう。[4]」

 

●第四に、「そのような行動が抑圧された人々の助けになるだろうか。 中国の指導者に恥をかかせることは気分がいいかもしれないが、それによってウイグル人などの待遇が改善されるだろうか。[4]」 むしろCCPはより厳しく自国民を管理するのではないか。

 

●第五に、「ボイコットは中国の人々、特に若い人たちにとって、政権やその抑圧政策に対する攻撃ではなく国家に対する攻撃とみなされるのではないか。[4]」 チャイナの未来はチャイナ自国民が決めることである。 チャイナの若者はCCPによる抑圧を好まないのは当然だが自国への攻撃は嫌う。 「CCPへの政権支持に向かわせる危険性がある。[4]」

 

●最後に、「中国の人権侵害を訴えるために、世界中の政府高官や著名人が大会を回避するような外交的ボイコット、あるいはスポンサーに支援を取りやめるよう働きかけることも考えられる。 これらはいずれも、選手を罰することなく、世間に不快感を与え、議論を促すであろう。[4]」

 

 

チャイナ共産党の人権侵害を理由に2022北京オリンピックをボイコットしたい気持ちは十分理解するが、開催国変更が不可能という結論が出るのであれば、筆者は外交ボイコット、商業ボイコットに加え各国から来るたくさんの選手及び役員と観戦者そしてメディアが報道するチャイナの実態を世界中に暴露する千載一遇のチャンスだと考える。 チャイナ共産党はより一層の警備体制を敷くであろうが、この時期にウイグルに加えチベット、内モンゴル、満洲の各民族が何とか海外メディアに現状を訴える行動も起こる可能性があり、そしてそれを期待したい。

(了)

 

 

[参考文献]

[1] 参政党 Tranlated Articles 日本防衛軍の創立 https://www.sanseito.jp/translation/2226/

[2] Coouncil on Foreign Relations June 16, 2021 https://www.cfr.org/in-brief/debate-over-boycotting-2022-beijing-olympics

[3] CATO Institute May 27, 2021 https://www.cato.org/commentary/boycotting-china-olympics-there-any-right-way-go

[4] CATO Institute February 25, 2021 https://www.cato.org/commentary/dont-boycott-2022-olympics-because-theyre-china

 

[画像]

The Beijing Winter Olympics are set to begin in February 2022, less than a year after the postponed Tokyo Olympics are held. Lintao Zhang/Getty Images

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