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「LGBT理解増進法」を盲目的に推し進める岸田政権の危うさ

「LGBT理解増進法」を盲目的に推し進める岸田政権の危うさ

令和5年5月8日
藤野 はるか

 
統一地方選挙終了後、降って湧いたように出てきた「LGBT理解増進法」。参政党アドバイザーの我那覇真子氏が米FOXニュースに出演し、日本政府にこの法律の整備を迫る米国大使エマニュエル氏の言動は日本に対する内政干渉であると発言したことが話題になっている一方で、4月に開業した東急歌舞伎町タワー(東京・新宿)の「ジェンダーレストイレ」が物議を醸している。

我那覇氏のツイート:
https://twitter.com/ganaha_masako/status/1653337190716559362

東急歌舞伎町タワー(東京・新宿)の「ジェンダーレストイレ」:
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2304/28/news147.html

海外で起きていることをフェアに伝えない日本の既存メディアにしか触れられていない多くの日本人には「LGBT」や「ジェンダーレストイレ」は、新しい世界の潮流に見えるかもしれない。しかし、すでに2015年11月には、米ニューヨークタイムズが「ジェンダーレストイレ(男女共用トイレ)」の必要性を以下のように主張している。

「自分の性的指向を公言して軍務に就けるようになり、同性婚がおおむね認められるようになった今、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(いわゆるLGBT)の人々、とりわけ”T”の性的少数者が次に求めるべき市民権は「男女共用トイレ」である。」
In All-Gender Restrooms, the Signs Reflect the Times – The New York Times (nytimes.com)

なお、この記事の「自分の性的指向を公言して軍務に就ける」というのは、2010年に当時のオバマ政権が「同性愛者であることを公言して軍務に就くことを禁じた施策」を撤廃したこと、「同性婚がおおむね認められるようになった」とは、2015年6月に最高裁判所が同性婚を禁止する州法は「違法」という判決を下したことをそれぞれ指している。

LGBTのような性的少数者を差別してはならない、というのは当然のことである。しかしそれを「LGBT理解増進法」という形で法整備し、「差別を法律で禁止」するとどのようなことが起きるのか。大多数の一般女性の権利の侵害につながるのである。すでに海外では以下のような事件や問題が起きている。

■カレン・ホワイト事件(イギリス、2017年)
「女子刑務所で2人の受刑者に性的暴行を加えたトランスジェンダーの囚人、カレン・ホワイトが終身刑の判決を受けた。ホワイトには、ほかの2名の女性をレイプした前科もあった。
ホワイトは2017年に別の犯罪(=隣人への連続刺傷事件、訳者注)でニューホール刑務所に再拘留中に2人の女性を襲った。裁判において52歳のホワイトは女性と子供にとって危険な「天敵」であると評され、レイプ、性的暴行、傷害の罪で最低でも9年半は服役すべきであると言い渡された。判決によると、ホワイトは男性として生まれ、現在は女性であると自認しているが、自分より弱い女性と接触する際には自らのトランスジェンダー人格を利用しているとされる。」
Trans inmate jailed for Wakefield prison sex offences – BBC News

また、同じ事件を扱ったThe Guardianの記事によると、
「法務省は、ホワイトの前科を考慮せずに彼女を女性刑務所に移送したことを謝罪した。」
Transgender prisoner who sexually assaulted inmates jailed for life | Prisons and probation | The Guardian

■リア・トーマスに関する一連の議論(アメリカ)
ウィキペディアによると、リア・トーマスのプロフィールは以下のようになっている。
「1999年または2000年生まれのアメリカ人水泳選手。2017年にペンシルバニア大学に入学し、2022年5月に卒業した。2017年から2020年までは大学男子水泳チームで競技し、2021年と22年に女子チームに移籍した。2022年3月に女子500ヤード自由形で優勝し、NCAA(全米大学競技協会)ディヴィジョンⅠ全国選手権で優勝した初めてのトランスジェンダー選手となった。2021年から彼女の存在は、女子スポーツ界におけるトランスジェンダーについての議論の的となった。」
Lia Thomas – Wikipedia

日本の大手マスコミはおそらくここまでしか報道していない。例えば、産経新聞では2022年9月に以下のような中学生・高校生向けのワークシートを提供している。これだけしか見なければ「スポーツや医学的な見地から専門家が設定した基準に従っていれば、トランスジェンダーでも女子スポーツに参加してもいいのでは」と思う生徒も多いだろう。
時事ワークシート(トランスジェンダー選手0911付 (sankei.com)

しかし、アメリカでは話はここで終わっていない。トーマスが500ヤード自由形で優勝した大会の200ヤード自由形でトーマスと同タイムで5位タイとなったケンタッキー大学のライリー・ゲインズが2023年2月、FOXテレビで告発している。
「私たちはリアと同じロッカールームを使うことを事前に知らされていませんでした。主催者は私たちの同意を得ることもありませんでした。私たちがいたロッカールームでは、6フィート4インチの生物学的な男性がズボンを脱いだり、私たちの裸を見たりしていたのです。私たちはリアの男性器にさらされたのです。」
Lia Thomas exposed ‘male genitalia’ in women’s locker room after meet, Riley Gaines says: Dropped ‘his pants’ | Fox News

ゲインズは現在、女子スポーツにトランスジェンダーの参加を禁止するための活動に取り組んでいるが、4月20日にはこのような事件に巻き込まれた。
「元NCAA水泳選手のライリー・ゲインズは、女子スポーツを守るというテーマで講演をするために訪れたサンフランシスコ州立大学で、講演終了後に身体的暴行を受け、身を守るために3時間近く部屋に立てこもらざるを得なかった。ゲインズが部屋にいる間に電話で話をした夫のルイス・ベーカーによると、ゲインズは警察の保護下にあったにもかかわらず、ドレスを着た男に複数回殴られた。」
College where Riley Gaines was attacked under fire for canceling conservative event: ‘Assault on free speech’ | Fox News

これらの耳を疑うような件について、日本語で検索してもツイッターやほとんど聞いたことのないサイトでの検索結果が断片的に表示されるだけで、日本語の大手メディアは一切報じていない。

他方で、カレン・ホワイト事件のあったイギリス、リア・トーマスの一件があったアメリカではトランスジェンダーの「権利」について、制限する方向へ動き出している。

2023年1月に更新されたイギリス政府のホームページでは、以下の記述がある。
「2022年10月4日、法務大臣はトランスジェンダーの囚人の収監についての政策変更計画を発表した。この変更により、男性器があるトランスジェンダー女性、性犯罪で有罪判決を受けたトランスジェンダー女性は、もはや女子刑務所に収監されることはない。」
Update on changes to transgender prisoner policy framework – GOV.UK (www.gov.uk)

今後、日本での増加が危惧されるジェンダーレストイレについても、2022年7月4日付の英BBCの報道によると、イギリスは方向転換したことがわかる。
「政府は、イングランドで新築される公共の建物について、男女別のトイレの設置を義務付けることを発表した。女性・平等担当大臣ケミ・バデノック氏は『女性が安心できることが必須』で『彼女たちの要望は尊重される』と述べた。政府は『ジェンダーレストイレの増加は、女性たちを不当に不利な立場に貶め、彼女たちは長い列に並ぶことになった』と加えた。(中略)さらにバドノック氏は『この変更により、男女別のトイレが確保されると同時に、希望する人にはジェンダーレストイレも使用可能になる。これは常識的なアプローチだ』と述べた。」
New public buildings must have separate male and female toilets, says minister – BBC News

昨年の中間選挙で下院の過半数を獲得したアメリカの共和党も動き出した。
「米国下院共和党は、4月20日、トランスジェンダー女性の学生女子スポーツへの参加を禁止する法案を可決した。下院でこの法案は219対203で可決され、上院に送られたが、民主党が支配する上院では可決される可能性はほとんどない。」
Republican-led ban on transgender student athletes passes US House, moves to Senate | Reuters

この記事にもある通り、この法案がすんなり可決するとは思えないが、少なくとも、イギリス、アメリカ両国とも、トランスジェンダーの権利の制限に舵を切り始めたと言ってよい。そんな中、日本は周回遅れで海外では失敗したLGBTの過剰な権利保護に向けて動き出している。

当然のことだが、どのような差別であれ、差別はなくすべきだ。しかし、海外では報道されている上記のような一般女性への重大な権利の侵害や、米英の軌道修正を国民に一切知らせないまま、米国大使エマニュエル氏に背中を押されて、「LGBT理解増進法」を盲目的に推し進める岸田政権の危うさを知って欲しい。

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