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2023.05.23

違法なオピオイド(アヘン)

違法なオピオイド(アヘン)

2023/5/21 山下 政治

 
今年3月に執筆した「チャイナの経済脅威に対抗する超党派の法案」という記事の中で言及したテキサス州の共和党モニカ・デ・ラ・クルーズ議員の提出した法案「違法合成麻薬の資金調達を防止する法律」はチャイナ製の違法なフェンタニル(合成アヘン)の流入を防止するものである。[1]

米国におけるオピオイド(アヘン)中毒は、長引く流行病となっており、公衆衛生だけでなく経済生産と国家安全保障を危険にさらしている[2]と米シンクタンクのCouncil on Foreign Relations(外交問題評議会)は指摘している。
アヘンといえば19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、チャイナでは英国や他の西洋諸国が輸入したアヘンによる中毒問題が深刻化しこの問題に対処するためにチャイナ政府はアヘン貿易を禁止しアヘン戦争が勃発した歴史がある。

現代のチャイナでは違法な麻薬の問題がまだ深刻な課題となっていて、アヘンの生産や流通の違法な拠点の一つでありアヘンの密輸ルートも存在している。これらの活動はアメリカへ大きな影響を与えている。
具体的には違法なチャイナのアヘンがアメリカに密輸され、オピオイド危機と呼ばれる大規模な中毒問題を引き起こしている。 この問題はアメリカの社会・経済・政治に深刻な影響を与えており多くの人々が死亡しているのが現状だ。

「2000年以降米国では100万人以上が薬物の過剰摂取により死亡しており、その大半がオピオイドによる。 近年はフェンタニルをはじめとする合成オピオイドが危機を牽引しておりメキシコからの供給比率が高まっている[2]。」

フェンタニルは強力な鎮痛剤の一種でオピオイド系鎮痛薬に分類されモルヒネよりも強力である。医薬品としては麻酔や手術の鎮痛または慢性的な疼痛の治療に使用され適切な用量と管理下で使用される場合にはフェンタニルは安全で有効な鎮痛剤であるが、過剰摂取や誤用、不正に摂取する場合には過剰摂取中毒や死亡につながることがある。

現在米国は、史上最悪の薬物危機に直面しておりCOVID-19の大流行の中、全米で急増したオピオイド関連の過剰摂取で、週に1,500人以上が死亡している。一方、数百万人のアメリカ人がオピオイド中毒に苦しんでいる。

この問題は、合法的な鎮痛剤の過剰処方から始まったと分析されているが、近年、外国に拠点を置く麻薬カルテルから供給される安価なヘロインや合成オピオイド、特にフェンタニルの流入により激化していると指摘されている。 この危機は、経済の足を引っ張り、国家安全保障の脅威となるほどの規模に達していて、オピオイドの誤用は医療費だけでなく労働力の低下という形で、年間数百億ドルの損失を与えている。

アメリカで販売されている鎮痛剤の中には、フェンタニルが含まれるものがありフェンタニルは、鎮痛剤パッチや注射剤、錠剤、舌下錠、ロリポップ、鼻スプレーなど、様々な形態で市販されていて前述のように強力な鎮痛効果があるため、慢性疼痛や手術後の疼痛などには効果がある。
近年アメリカではフェンタニルを含むオピオイド系鎮痛剤の適正使用についての啓発活動がおこなわれており医療従事者にむけた教育プログラムや患者に対する情報提供などが行われている。

また、フェンタニルを含むオピオイド系鎮痛剤の不適切な使用や不正流通に対しては法執行機関による厳しい取り締まりが行われている。 医療機関や薬局でも不正な処方箋や誤った使用に対する監視や報告が求められている。
さらに、オピオイド中毒に対する治療法の開発やオピオイド中毒患者に対する支援・治療プログラムの拡充も行われているが、依然としてオピオイド危機は深刻な問題だ。 フェンタニル含有製剤の不正流通や合成ドラッグの出現など新たな問題も生じていてアメリカ政府は引き続きオピオイド危機に対する国際的な対策や研究にも取り組んでいる。

専門家や政府関係者は、チャイナが違法なフェンタニルの生産や流通に関与していると指摘していて、チャイナのオンライン市場や不法な化学物質メーカーがフェンタニルを含むオピオイド系薬物の販売や輸出に関与しているとしている。

冒頭にも述べたようにテキサス州の共和党モニカ・デ・ラ・クルーズ議員の提出した法案はまさにこの不法チャイナ製フェンタニル(合成アヘン)の流入を防止しようとする法案である。

およそ200年前チャイナはヨーロッパからのアヘンの流入により中毒問題からアヘン戦争へと発展し香港・マカオを借地されたが、21世紀の現在、米国がチャイナからアヘン戦争を仕掛けられている様相だ。

アヘン貿易を始めたのはイギリス東インド会社が最初ですぐにオランダ東インド会社が続き、表上は布教で「中国内陸伝道団」を組織したが、実際の任務はチャイナ人の農民や低賃金労働者をアヘン漬けにすることで莫大な利益を得ていたのである。もしチャイナがアメリカに対してオピオイド系薬物の販売や輸出に関与しているとするならば、その目的はオピオイド貿易によりアメリカから莫大な利益を得ることなのか?もしそうだとすれば、大きな国際問題である。
 
参考
[1] Financial Services Committee Advances Bipartisan Bills to Combat Economic Threat from China

[2] Fentanyl and the U.S. Opioid Epidemic

[3] 臨床からみたオピオイドの歴史

[4] アヘン戦争ふたたび 中国製の合成薬物が米社会を破壊=米専門家

写真
UN responds to the global opioid crisis

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