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スペイン議会で極右政党の議席が伸びている?

スペイン議会で極右政党の議席が伸びている?

2023/7/5 松本裕子

 
スペインといえば、マドリードの闘牛、バルセロナのサクラダファミリア、アンダルシアのギターなどを思い浮かべるかもしれない。あるいは、中南米各国でスペイン語が話されていることで、歴史的な面を思い出す人もいるだろう。今回は、「スペインの議会で極右政党の議席が伸びている。なぜ?」を探っていきたい。
 
まず、スペインの政治体制がどのように移り変わってきたか。1975年に複数政党を認めなかったフランコ総統が死去し、同年にファンカルロス1世国王が即位。2年後に立憲君主制のもと、総選挙が行われ1978年に現行憲法が制定された。
 
1977年以降、2大政党、スペイン社会労働党(以下社会労働党と略)と国民党が政権交代を繰りかえす。社会労働党は1879年にマルクス主義政党として結成された中道左派。国民党はフランコ時代の保守政治家が作った国民同盟を前身とする中道右派である。この2大政党以外では、社会労働党より左のポデモス連合、中道(やや右寄り)の市民党、2013年結党され極右と呼ばれるボックス党がある。
 
カトリック国のスペインは、妊娠中絶、同性婚など宗教的社会問題が問われる。同性婚などに賛成の左派から反対している右派へと順番に政党を並べると、左側からポデモス連合、社会労働党、市民党、国民党、ボックス党、となる。経済政策を見ると、大きい政府やベーシックインカムに賛成の左派から反対している右派へと、全く同じ並びになる。
 
だが各党のグローバリズム政策に関しては上記の左→右の法則が通じない。人、物、金の自由化を最も主張しているのが、現サンチェス首相を擁立している与党社会労働党。ヨーロッパ区域内の自由化を進めるE Uからの離脱を訴える政党はない。
 
国民党は移民の取り締まり強化を訴えており、極右と呼ばれるボックス党と似た政策をかかげる。これは、地中海経由で大量に来る移民への憂慮から来ている。
 
連立政権のジュニアパートナーのポデモス連合は、グローバル資本主義から国民を守ると、連立を組む社会労働党とは違うことを主張する。しかし、コロナ対策など、政権を批判された時、ポデモス連合は、反権力という立場を取れない。
 
ボックス党は、当初イスラム系移民問題を主要な争点としていたが、カタルーニャ地域の独立反対に舵を切り、スペイン全土からの反対票を獲得し、2019年11月の総選挙で第3党になった。
 
メデイアはボックス党に対して、極右だとか、大衆におもねるポピュリストと批判する。しかしボックス党の票が伸びている原因は、政策をタイミング良く転換した事と、移民反対や国の伝統や形態を、ポリテイカルコレクトネスを気にせず発信しているからではないかと思う。また、2020年3月のコロナ禍での非常事態宣言について、ボックス党以外、主要政党が賛成に回ったことも、要因の一つであろう。
 
サンチェス首相は、7月の解散総選挙を宣言した。7月のスペイン議会がどういう色分けになっているのか。この結果は、ヨーロッパの未来を、いや我々の未来を教えてくれるのかもしれない。
 
 
参考文献
1)Could far-right Vox party become Spain’s kingmaker in July vote?
2)Spanish PM Sánchez calls snap general election after disastrous local polls
3)スペイン王国基礎データ|外務省 
4)【2019年度版】11月総選挙とスペインの政党のまとめ
5)Socialists win repeat Spanish election, Vox becomes third-biggest force in Congress
6)https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/7cc0ba7bc9ed48d0ba8d70725d4c66a5.html?brand=politics&webTheme=politics&web=true&hideTitles=true

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